ネタバレ感想 「ひぐらしのなく頃に 業/卒」

最高でしたね!

 

以下、ストーリーを振り返りながら感想を書きます。

ネタバレへの配慮はなく、ストーリー上の重要な謎とその解答についても触れているので、本編未見の人は先に本編を視聴することを「強く」おすすめします。

ネットだと、Amazonのプライムビデオ、あるいはdアニメストアなどで見られるよ!

 

higurashianime.com

旧作ひぐらしのリメイクのような様相から一変、完全新作であることが明らかになった「ひぐらしのなく頃に 業」。

一度は乗り越えたはずの「昭和58年6月の袋小路」で繰り返される惨劇が、なぜか「正しい選択肢」を選んでも回避することができないというストーリーは旧作を楽しんだにほど深く刺さったのではないかなと思います。

旧作で描かれた雛見沢の表と裏の知識を持ってしても見通せない新しい謎は、リアルタイムで推理し考察する楽しさを思い出させてくれました。もちろん、旧作を経て、犯人当てに意味がないことを学んだ我々は、昭和58年6月の袋小路を生み出している「構造」をこそ推理するべきでした。

ひぐらし業の視聴時は、ストーリーの要所で姿を見せる作業員の男たちのミスリードにまんまと騙され、「東京」の鷹野三四らとは別の派閥の暗躍を予想していたのですが、ご存知の通りその推理は大外れ。実際には梨花ではないもうひとりの「繰り返すもの」の誕生こそが新たな惨劇の原因でした。そんなんわかるか!という抗議の気持ちと、これこそひぐらしなんだよなぁ、という満足感を同時に味わえました。

さて、わかるか!と抗議したくなる解答ではあるものの、しかし、推理が不可能というわけでもなかったように思います。ここがかつての惨劇を乗り越えた世界であるということと、「鬼狩柳桜」という神をも殺す剣が持ち出されていたことを考慮に入れるべきでした。「神」の関与からもうひとりの「繰り返すもの」の存在に気づくことができれば、それが誰か、というところにたどり着くのはそこまで難しくなかったように思います。

惨劇の黒幕と動機が明らかになったところで、物語は「卒」へと移ります。

 

ひぐらし 卒」の前半では、業で描かれた惨劇が具体的にどのような手法によって引き起こされたのか、が明らかにされます。しかし、ひぐらしにおいて手段(ハウダニット)はあまり重要ではないので、これらのストーリーはむしろ犯人の心情をきちんと描くための演出だったのかなと思います。旧作において梨花の長い長い挑戦が最終的に圭一やレナの行動を変えて奇跡を起こしたように、今作でも北条鉄平を始めとする人々の行動や性格が変化しています。人間の可変性、ある世界のある状況でとんでもない惨劇を引き起こす人が、別の世界では仲間を助ける善人になる(あるいはその逆)というのはひぐらしで繰り返し描かれるテーマですね。

前半のいわば「解答編」で惨劇の構造が明らかになると、それでは以下にして惨劇を回避するのか、という「解決編」に興味が移ります。序盤に登場した「鬼狩柳桜」がキーアイテムになるのは当然として、いかにして奇跡が起こされるのでしょうか?

まぁ、なんというか、今作のクライマックスはちょっと強引だった印象はあります。黒幕と構造が明らかになればそのような展開しかなかったのかなぁという気もしますが、うーん。最終的にはエウアをこそ倒さなければいけないし、その前段階として梨花と沙都子の和解が必要だったので、まぁああなるしかなかったのかなという印象です*1

エピローグも、本作の内容を踏まえるとすごく良くて、特に部活メンバーが全体的に大人びているのが良かったですね。人は成長するし、変わっていく。昭和58年を幾度となく繰り返す物語だからこそ、その先のエピローグでみんなが変わっているのが良かったです。

ただまぁ個人的には、エウアと羽入の決戦の結果、ふたりは繰り返すものとしての力を失ったほうが物語としては綺麗だったかなという印象があります。そうしてしまうと、更に10年後に再度新作を作ることはできなくなってしまうかもしれませんが。。。

 

さて、以下は蛇足的なよもやま感想。

本作、オープニングやエンディングがめっちゃ良かったですよね。特に業の不穏な一枚絵が好きでした。ノンテロップOP・EDのために初めて円盤の購入を検討するくらい。ひぐらし、スピンオフとかの明るいお話も好きなんですが、やっぱシリアスの物語のほうが好きだなぁ。

また、アニメの絵柄というか、キャラデザも好みでした。ひぐらしって、同じキャラが可愛かったり怖かったり絶叫してたり絶望してたりするのですが、可愛いシーンでは可愛く、怖いシーンでは怖く、凛々しいシーンでは凛々しく描かれていて良かったですね。グッズがほしい。

 

そんなこんなで、ウン年ぶりの「ひぐらし」を満喫することができました。というかなんならPS4ひぐらし奉を買って積んでるので、もうしばらくひぐらしの世界に浸る予定です。アニメサブタイトルの「業」「卒」はたぶん「卒業」という意味だと思うのですが、卒業したあとも、いつでも戻ってこれる場所として雛見沢はあり続けるのかなと思っています。

*1:一方で、川に落ちた剣が謎の因果によって羽入の手に渡るという演出は、なんでそうなるのか全くわからないけどすごく良かったです。奇跡というのはときに合理を超えるし、合理を超えてこその奇跡ですよね。